ヒップホップ史概論 後期試験(2単位)

問一:以下a〜dまで挙げる4曲のオールドスクール・クラシックを歌ったグループはどれか、それぞれ正しい番号に照らし合わせよ。

a.RAPPER'S DELIGHT b.PLANET ROCK c.HIP HOP,BE BOP(DON'T STOP) d.THE MESSAGE

1.アフリカ・バンバータ&ソウル・ソニック・フォース
2.グランドマスター・フラッシュ&フューリアス・ファイブ
3.シュガーヒル・ギャング
4.マン・パリッシュ

a( ) b( ) c( ) d( )

問二:以下の二ガーの写真e〜iを見てそれぞれ正しい名前を選べ。


e                         f


g                      h


i

1.DR.DRE
2.SNOOP DOGG
3.Q−TIP
4.JAY−Z
5.COMMON

e( ) f( ) g( ) h( ) i( )

問三:以下に資料として転載するライナーノーツの一部はどのアーティストのものか、正しい選択肢を一つ選べ。

『対談:ヤン富田いとうせいこう、井出靖、押切伸一、Rap、XXXXを語る!!

ヤン富田:XXXXって何か明るいよネ。(以下ヤン)
いとうせいこう:明るい、明るい。そこが頭良いとこだよネ。(以下いとう)
ヤン:今までヘビーな方向、エリックBとかいろいろあったけど、ここに来ていきなり軽くて明るいというか……
井出靖:こんなに明るいのって今までにあったの?(以下井出)
/いとう:(……)だから、もう自分達はニュースクールのさらにニュースクールなんだという意識があるんだけど、普通だったらそれを、何か「お前ら皆だめだ」みたいなプロモVTRを作るけど、いじめられっ子になったり、こずかれたりしたりする役を演じちゃう頭の良さと立場の把握の仕方が凄く頭良いよネ。
/井出:だってジャケットにしたって笑わせてくれるよネ。
いとう:凄くかわいくてさ。ラップの中では斬新だよ。サイケデリックな感じでヒッピーだって名乗っているしさ。
 何か凄くラップってストリートなもので、生活に密着していたのに、何かオウギョウなことを言いがちになことになっていたよネ。
ヤン:偉そうなこと言ってあたり前って感じで……
いとう:そうそう。それが、もう一回本当のストリートに戻っているという気がする。本当その辺のあぶない所ではなくて普通のショッピングしたりしている黒人の本当のストリートでふざけているみたいな……』

1.ア・トライブ・コールド・クエス
2.ジュラシック5
3.デ・ラ・ソウル
4.ザ・ルーツ
5.ブラック・アイド・ピース

( )

問四:以下の4つのうち、DEF JAMを創設した一人でもあるリック・ルービンがプロデュースしていないラッパーはどれか、最も適当なものを一つ選択せよ。

1.ランD.M.C
2.ビースティ・ボーイズ
3.エミネム
4.LL・クール・J

( )

問五:2パックとノートリアスB.I.Gの抗争の発端を以下の4つのうち一つ選び、その項目を文中で使用して事件の経緯について2000字以内で説明せよ。

《盗作騒ぎ 恋人を奪い合う三角関係 強盗発泡事件 ギャンブルのイカサマ》

〔                                        〕

問六:以下の4種類の薬物名のうち2つを選び、それぞれに対応するラップ表現の単語を記せ。ただし、ILLとDOPEは除くものとする。

大麻 コカイン ヘロイン LSD》

〔     ⇒     〕〔     ⇒     〕   

問七:BITCHとLADYの違いについて実体験を元にリリックを3行以上創作せよ。その際必ず1回以上韻を踏むこと。なお、ライムの文字数に比例して追加点を換算する。

〔                                        〕

問八:全米レコード協会の認定する「PARENTAL ADVISORY EXPLICIT LYRICS」とは何か、その意味と使用目的を説明せよ。

〔                                        〕 
問九:「ニュー・ジャック・スイング」と呼ばれる代表的なアーティスト/グループを一つ挙げよ。

(      )

問十:「ニュー・ジャック・スイング」のサウンドの特徴について、簡潔に要約せよ。

〔                                        〕

●指定教材:丸屋九兵衛「音楽誌が書かないゴシップ無法痴態」↓


 たぶんこれは問七を頑張れば合格点が貰えるシステムになっているんだと思うよ〜。全問正解者にはアラザルVOL.3とヒアホン3とエクス・ポ第二期0号の3点セットをプレゼント!!応募はこちらarazaru@brainz-jp.com「ヒップホップ概論後期試験応募係」まで。期限は2009年12月31日までというのをよくチェッケダー。

・アイスT主演で一時期ブームにもなった「ニュー・ジャック・シティ」。100¥。

 アラザル3にも書きましたが相変わらず目的もなくギャングスタ・ムービーの研究が続いています。さすがニューヨークをレペゼンしているだけあってスコセッシとかギャング映画・マフィア映画をいっぱい撮り過ぎ……。ブラックスプロイテーション映画とヒップホップ音楽のカップリングがわが国に輸入されるとどうなるかというと、日本版「ストリート」を構想するためにジャパニーズ・ラッパーたちは例えばスチャダラパーが「太陽にほえろ!」のサントラをサンプリング、またZEEBRA一派が勝新太郎主演の「悪名」シリーズを引用するなど、80年代以降70年代から順番に過去に遡って独自に日本映画の文脈に置き換えて「ギャングスタ」というアイコンの和訳を試みていましたが、ILLボスティーノとかもその点勉強熱心です。そしてゼロ年代末期になってまるでATGチンピラ映画のシナリオを実際に生きてしまっているかのようなラッパーが小名浜の鬼です。2009年に「極窓」というアルバムをリリースしました。『(二度の懲役で学んだことはありますか?)「人付き合い。人は人の中にいなきゃいけないんだ、って。ダイアモンドはダイアモンドにしか磨けない。」』(Amebrakインタビューより)
 個人的にはヤクザ映画は深作欣二の「仁義の墓場」みたいなアンチ・ヒロイズムな負け犬狂犬鉄砲玉リアリズムの方が好みなのですが……。あとビリヤードの方の「ハスラー」はロバート・ロッセン監督なので必見です。しかし最近観た馬鹿は死んでも治らないバッド・ボーイ映画はヴィターリ・カネフスキーの「ひとりで生きる」が最強過ぎるのでユーロスペースで1/16から好評につきアンコール上映が決定したらしいので見逃してはなりません。さようなら、ギャングたち!

・妻が若いアメリカ黒人兵に寝取られる話の小島信夫抱擁家族」を中心に戦後社会を論じた『成熟と喪失』。

成熟と喪失 “母”の崩壊 (講談社文芸文庫)

成熟と喪失 “母”の崩壊 (講談社文芸文庫)

・『アフロ・ディズニー エイゼンシュタインから「オタク=黒人」まで』
 ヒップホップはリア充というよりDQNだと思うんですよね。絶対マジョリティじゃない原義通りのサブ・カルチャー。しかしでも黒人文化は虐げられる側から今やマジョリティになりつつあるって「nu」2号の大谷×磯部対談でも言ってたけど、翻って並行してオタク文化もそうだけど、「アフロディズニー」買ったはいいけどまだ読了してない…。

SEEDA論を書き終わってから読んだ山城むつみ「文学のプログラム」ですが、「小林秀雄のクリティカル・ポイント」に通底することが書いてある気がしてならない(←読了前)……『いかに盲目で荒唐無稽であるにしても、「反復」が「読む」ことと「書く」ことの臨界でなされている以上、それはまさしく「批評」なのである。(……)「批評」という、ふつうには「創作」とは別のものとされるジャンルへの逸脱を徹底することによって、ほかならぬ「批評」の中心に「創作」が露出している。』(「小林批評のクリティカル・ポイント」)……(読了後→)どころか小林秀雄坂口安吾保田與重郎の戦時中のテキストの三角関係を鋭く拮抗させる「戦争について」ががっつり重なっているので今から無理矢理サブテキストに指定してみたいぐらいです。書くことの「うしろめたさ」としての「文学のふるさと」、『そこから書くことは、たとえば小林が想像し、安吾が満喫した戦争の美しさのような、ファシズム的な魅力を、その中心において拒絶することにつながる。そのかぎり、安吾がいう意味での「文学」はファシズムに抗しうる。』(「文学のプログラム」88p)
 日本語で書かれる文章に今現在も潜在する「(日本イデオロギーを派生する機能としての)訓読のプログラム」を分析した後半といい、この本は全体を貫いて文字を記すこととそれを解読することのクリティック(危機)の切迫が刻まれていると思った。『すでに書いてしまったしくじりは、救いようがあるとすれば、これから新たに書くものによってしか救えない』(単行本あとがき)

『書くというただそれだけのことが、そんな深刻な現実問題に拮抗しうるなどというのは、不条理な、おかしな話にきこえるかもしれない。しかし、どんなにナイーヴにきこえようと、文学の、あるいはおなじことだが、文学批評のこの可能性、このおかしさを信じずにはいられない。そうでなければ、書くことにどんな意味があるというのだろう。われわれは、安吾とともに、文学万能だとあえていわなければならないのではないだろうか。
 (……)しかし、内容はどうあれ、書くことそのものが現実的な文脈にコミットしていることから来るその文体には、無視できない迫力がある。読む者は、彼の言説に訝しさを感じつつも漠然と説得されずにはいられない。彼のいうように筆はみな非力である。書くことは、現実に対していかなる力(power)ももちえない。だが、書くことには力(virtue)が宿りうる。保田はその力にうったえて大東亜戦争をまっとうしようとしているのである。』(「戦争について」)

・今になって辿り着いたので調べたら不知火レーベルの在庫はロスアプソンで売っていた(というか買った)。ベスト盤的コンピレーションの「Shadow world」はフィルムメイキングな感触のコンクレート音響ヒップホップ/シャドウ・ジャズ・ブレイクスの可能性のいぶし銀が充満している。睡魔で沈んでいくような瞼が重たいブレイク・ビーツの「Babi Breakes Remixed By Tamaru」がかっこいい。あとKIBAMANとRuf neck pianoが気になった。虹釜さんによると不知火は存在自体がESP-DISKみたいなものだったそうです。

・日本人の書いたリリック↓

 「高貝弘也詩集」(現代詩文庫)には新宮一成ラカンのリットラル(文字/波打ち際)という概念を鍵にした「汀のできごと」という美しい解説を寄せている。

『高貝さんの独特の統辞法にとらえられて、主語を失った文字たちは、自分がどんな述語に続くのかも知らないで、浮いている。汀の死産は、浮き惑う文字たちの誕生。それらは汀のできごとを、我々に見せているものたちである。
 人間の存在の誕生は、文字としての汀での誕生である。もともと「字」という字が、おのれの中に子を宿しているのはむろん偶然でもなんでもない。紙の上に並んだ文字は、汀で人とものの間を揺れている子である。

 知と悦びとの間に、波打ち際がある。文字というのは、この波打ち際に据えられるべき、文学的なものではないか(ラカンセミネール第十八巻』)。

 自分が生きた人間であるという「こと」を知りつつ営まれる人間の生活は、生きた人間ではないかもしれない「もの」を排除した状態である。もしこの知っているという「こと」だけしかなかったら、生きることに悦びはない。誰かが、この排除された「もの」を拾い集めて、文字にする。波打ち際には、いろいろな「もの」が打ち寄せられているから、文字の材料は豊富にある。「椰子の実」も、あるいは「死体」も。
 我々が二回目の誕生を経験した瞬間から、それまでの生命的状態は、翻って、不気味な半死半生のものになる。我々自身がかつてそうであったところのものを、貝や魚や水草や河童が、腐敗しながら担っている。』(147-148p)

・「サン・ラー伝 土星から来た大音楽家」に載っている湯浅先生の至言。

『サン・ラーは、真正面からジャズと取り組まず、見ための派手さや抽象的言辞で聴き手をごまかしていた、と言う人々がいる。
 真面目なふりをして自分の中身のカラッポさをごまかそうとする者のほうが、実は多いと何故思えないのだろうか。むしろサン・ラーの真剣さが見ためによって見えなくなってしまう人の感受性のほうが問題である。ふざけていたり、ふとどきであやふやな意志でサン・ラーのような活動ができると思う、その心根こそ腐っている。
 立派でふんぞりかえっていて高価で整った身なりの人間がやる整った音楽から発見できるものの多くは退屈だ。』(監修者あとがき)

・先日の文学フリマで何を買ったか報告するのをさっぱり忘れていましたが「書評王の島VOL.3」「kader0d3」「REZZINE」といったところですが、書評王の島チームによるどこの雑誌に何を書いて幾ら貰ったか取材した「あなたの知らない原稿料の世界2010」はたいへんためになる袋綴じで今暴かれる文筆業の死活問題が熱いことになっています。トヨザキ社長先生によると大手出版社の原稿料の人として最低ラインは400字一枚で5000¥とのこと。だいぶ前、某Pあ誌のフイルムフェスティバルの自主映画コンペ部門の架空のキャラクター座談会のコメントをゴーストライターっていう企画で×行コメント書いて5000円貰ったんだけどその時はさすがPとぬか喜びだったけど応募作品のビデオを全部見るとか時間と労力を考えると文字数には替えられないコストがかかっているわけだ。社会人になったらそんな無駄に使える暇はない…。だからそういう必要経費とか資料代とかをまともに精算すると今の所基本赤字な気がするので原稿料ってどんな価値基準なんですかっていう謎がこの書評王チームの袋綴じによってさらにtwitter上でハッシュタグ#genkouryoで議論に火を付けていて興味深い。また書評講座に参戦してみたいのですがこれを読むとかなり歴々の書評王者決定戦が熟練のアダルトめなのでもうちょっと鍛え直してから挑戦します…。

 フィルムアート社の出版業の良心は偉大すぎる。すっかりブログがタンブラー化していますが(前から元々ですが)言いたいことは活字で言ってるからいいんだ…。

ホームシック 生活(2~3人分)

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音楽から解き放たれるために? ──21世紀のサウンド・リサイクル

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